家族と向き合う群像劇〜小欢喜〜

我的前半生に続き、3本目の中華ドラマの鑑賞です。
今回は中国人の同僚イチオシのドラマです。
その名も『小欢喜』です。
舞台は北京の中心部。描かれるのは高考を受ける子供を持つ、三つの家庭の様子です。
その三家庭がある一つの集合住宅に一緒に住んでいて、高考に向けてお互いに助け合い、時には反目し合いながらいくという内容のストーリーです。




高考って??

高考とは、毎年6月の初旬に行われる統一大学入試試験。
「通高等学校招生全国统一考试」、通称「高考(ガオカオ)」と呼ばれ、毎年6月7日と8日の2日間に渡って行われる。

簡単にいうと、日本のセンター試験のようなものですが、規模が圧倒的に違います。
毎年約1000万人近くが受験します。(センター試験は大体60万人位)

中国には1300程の大学がありますが、そのほとんどが国公立大学。
その中でも「国家重点大学」と定められた大学は、入るだけで将来が約束されます。
しかし、国家重点大学はたったの88大学。
受験生のほぼ全員が、この88大学を目指して勉強するのです。

そのプレッシャーたるや相当なもので、中国人の同僚曰く、「寝る暇すらない、死ぬかと思った」というほどです。
このドラマでも出てくるのですが、勉強時間を確保するために、学校に近い場所に引っ越しする家庭も多くいるそうです。

中国には昔、科挙という役人になるための激ムズの試験もありましたが、この風習が今も生きているという感じですね。
この制度が中国の過度な競争を引き起こしているといっても過言ではなありません。
そりゃあ日本は勝てへんわ。

 

それぞれの課題を抱える三家庭

さて、そんな国家的にも大きなイベントである高考に向けて、各家族が苦悩を抱えながら生活をしていきます。
それぞれの家族に、それぞれの課題があり、苦悩するポイントも違います。
そこが見ていて面白いです。では、個性あふれる三家庭を紹介していきます。

 

バランス感覚に長けたホワイトカラー家族

このドラマでは主役となる家庭です。
両親共にホワイトカラーで、経済的にも余裕のある家庭。(のちに大きなトラブルあり)
童文洁、方一凡、方圆の三人家族ですが、のちに童文洁の姉の子である林磊儿が養子と言う形でやってきます。

一家の大黒柱である方圆(黄磊)。
結構お気楽なお父さんという感じですが、息子たちのことを大切に考えており、この家族のバランスをうまく保っています。
たまに、奥さんをうまく嗜めることもあり、いい旦那さんです。

お母さんの童文洁(海清)。
バリバリのキャリアウーマンで、息子たちが高考でいい結果を出すことを願っている。
それ故、時に行き過ぎた指導や言葉を吐いてしまい、息子たち(特に方一凡)を追い込んでしまうことも。
のちに仕事でうまくいかなくなり悩むことに。

一人息子の方一凡(周奇)。
典型的な調子乗りで、学校でも数々のトラブルを起こす問題児。
しかし、学友たちからは慕われており、憎めない存在です。
高考にはあまり積極的ではなく、母親をヤキモキさせる原因に。
しかし、後にダンスと歌の才能を爆発させ、「艺考」と言われる芸術大学を受ける試験に挑む。

童文洁の姉の子である林磊儿(刘家祎)。
母親が亡くなったため、頼りにならない父親の元から童文洁が引き取って方家の一員に。
凄まじく勉強ができる学霸(中国で勉強 No.1を表す)
清华大学(中国No.1の大学)を目指し、一心不乱に勉強に励む。
心優しく、この家族に新たな風を吹き込む。

 

夫婦間の関係が娘に影響を与える

父である乔卫东の浮気が原因で離婚し、厳格な母の管理で育った乔英子。
心配した父は同じマンションに引っ越してきて英子を甘やかすが、そのことが逆に母の怒り、娘を取られるという不安を誘い、どんどん娘の英子にプレッシャーをかけてしまう。
本作で、最も課題を抱えている家族。

父である乔卫东(沙溢)。
既に離婚していて、現在はヨガ講師の若い女性とできている。
経済的には余裕があり、娘に対しても甘やかす一方。
娘からも頼りにされているが、前妻との関係は最悪。
しかし、よき父として、徐々に娘のために奔走しだす。

 

母の宋倩(陶虹)。
家庭教師をして生計を立てており、勉学に対する姿勢は相当厳しい。
娘の英子に対しても、清华大学に合格するように、日々プレッシャーをかけている。
娘の意向などは一切聞く耳を持っていない。
父が娘を甘やかすことをよく思っておらず、たびたび衝突する。

二人の娘である乔英子(李庚希)。
天文学が大好きで、将来はその道に進みたいと考えている。
しかし、そのことを理解してくれない母親との関係に悩み、また父との関係にも板挟みになり、先進を病んでいくことに。
結構可愛い女の子なんやけど、その可哀想な境遇のせいでなんか可愛さが半減している気がする。

 

父との関係に悩む公務員一家

先ほどの家庭とは真逆で、息子と父の関係が良くないのがこの一家。
父は共産党の党員、母は天文台で働いていて、昔から息子とは離れ離れになって生活をしていた。
杨杨が高校3年生になったのを機に両親は北京に戻ってきて家族3人で暮らし始めます。
しかし、互いの溝は埋まらずに、ギクシャクした関係が続いていきます。

地域の区長を務める季胜利(王砚辉)。
今までは党の仕事一筋で、息子のことをあまり考えてなかった。
うまくいかない息子との関係に悩むことに。
挙げ句の果てに公衆の面前で息子に罵倒される。
しかし、ある出来事を機に息子との距離は縮んでいくことに…。

母である刘静(咏梅)。
息子のことを大切に思っており、考えも尊重している。
息子からの信頼も厚く、父親との橋渡し役になっている。
天文台に勤務しており、その関係で乔英子の精神的な支えにもなっていく。
しかし、物語中盤で大病を患っていくことに。

 

一人息子の季杨杨(郭子凡)
家族とは離れて暮らしており、久々の家族生活(特に父親)に煩わしさを感じている。
レーサーを目指しており、高考にも無関心。
学校にフェラーリを乗りつけるドラ息子でしたが、家族と関わるうちに心境が変化していき、徐々に溝も塞がっていく。

子供たちの苦悩と親たちの苦悩

このドラマの一番のポイントは高考をめぐるプレッシャーです。
子供達にとっては、自分の親から過度なプレッシャーをかけられて、それに耐えながら学習を進めていく苦しさが描かれています。
たとえ試験が終わったとしても、待っているのは幸せではなかったりもします。
(ドラマ内でも不幸な事故が起きてしまいます…)

 

そして、親たちの苦悩もまた同じ。
なんとか子供達を良い大学にいかせてあげたい。でも、親元からは離れて欲しくはない。
そんな親のエゴも見え隠れして、それが知らず知らずのうちに子供たちを苦しめてしまいます。

 

どちらも高考の悪しき影響なのでしょうが、これが中国の伝統的な競争なのでしょうね。
ドラマなので、どこまで誇張されているかはわかりませんが、同僚曰く「似たようなものだよ」と言っていたので、あながち遠からずなのでしょう。

 

個人的には、乔英子が精神的にどんどん追い詰められていくのは見るに堪え兼ねました。
もし自分の子供が、受験でこんな状態になったらちょっと辛いな。
そのときは受験なんかやめさせたいな。

 

現代の中国がよくわかる

全49話と決して短くはないですが内容はとても面白かったです。
中国ドラマのほとんどに言えることですが、最初の4、5話は全然面白くない(笑)
でも、後半の加速度的な面白さは半端ないですよ。

 

ドラマとしても楽しめるし、中国の現代の若者の様子を学ぶために見ても面白いかもしれませんね!

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